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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)262号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士樋渡道一の上告理由第一点について。

原判決の認定するところによれば、本件土地は、かつては畑として耕作されたことがあつたけれども、昭和三年春には既に耕作は廃止されて原野となつており、その後も引続き一〇数年間耕作されず全く荒廃しておつたもので、昭和一九年春に至り訴外田川達郎、鈴木勘蔵外一〇数名の附近居住者が所有者藤野には無断で休閑地利用の菜園として内的四反歩の耕作を始めたが、間もなく藤野から明渡の請求を受け、同年秋耕作物の収穫後明渡して了い本件土地は再び休閑地となつたもので、被上告人は昭和二〇年二月頃右藤野から本件土地を買受けたというのであり、右事実により原審は右売買当時において本件土地を農地でないものと判断したのであつて、右判断は相当であるから、この点につき原判決は所論のような違法はない。

同第二点について。

本件土地が昭和二三年四月二四日湯川地区農地委員会において農地買収計画に組入れられたことは、原審の認定するところであるが、農地委員会において土地を農地買収計画に組入れたからといつて、その土地の所有者が所有権に基づき明渡を求めることは何等妨げないと解すべきであるから、これと同趣旨に出でた原判決は相当であつて、所論のような違法はない。

よつて、民訴四〇一条、九五条及び八九条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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